福岡高等裁判所 昭和28年(ネ)465号 判決
控訴代理人は、原判決を取消す、被控訴人は控訴人に対し金四万三千円及びこれに対する昭和二十七年十二月十一日以降完済まで年六分の割合による金員を支払え、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする、との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張及び証拠の提出、援用、認否は、すべて原判決当該摘示と同一であるから、これを引用する。
<立証省略>
三、理 由
訴外石田定雄が昭和二十七年一月三十一日控訴人に宛て金額五万円、満期同年二月二十八日、振出地及び支払地の記載なく振出人である右訴外人の名称に別府市御成町南清荘と附記してある約束手形一通を振出し、訴外国本素乃が該手形の保証をなしたことは当事者間に争がない。そして成立に争のない甲第一号証(本件約束手形)によれば、振出人石田定雄、保証人国本素乃の署名に添えて「立会保証人和泉浦次」なる記載及び署名があること明瞭である。
控訴人は、被控訴人も亦本件手形につき保証をなしたものであると主張し、被控訴人は単に該手形振出の事実を証する意味で右記載及び署名をなしたものに過ぎない旨抗争するので、この点につき考察するに、元来約束手形における保証は「保証」その他これと同一の意義を有する文字をもつて表示し保証人が署名をなすべきこと手形法第三十一条、第七十七条の明定するところであり、且手形はいわゆる要式証券であつて、手形に記載せられた事項が如何なる意義を有するかは、手形行為の当時における手形面の記載自体に徴してこれを定めるべきものと解すべきであるが、本件約束手形における被控訴人の署名の上に記載せられた前記「立会保証人」なる文字は、直にこれをもつて右法条にいわゆる「保証」又はこれと同一の意義を有するものとは認め難いのみならず、又右記載自体に徴してもその法律上の意義明瞭であるとはいい難い。そこで署名者たる被控訴人が如何なる趣旨でかような記載をなしたものか他の証拠をも参酌してこれを決する外ないものと解すべきところ、前記争のない事実に前顕甲第一号証及び成立に争のない甲第二号証、原審証人和泉ちよの証言、原審証人吉田理平の証言の一部並に原審における被控訴本人訊問の結果を綜合すれば、訴外石田定雄は訴外吉田理平及び被控訴人の仲介により昭和二十七年一月三十一日控訴人から金五万円を借用するに当り、控訴人に対しこれが借用証代りとして本件約束手形を振出したものであるが、右債務の担保として相当の山林を提供し且その叔母である訴外国本素乃を保証人に立てることを約したため、控訴人はこれにより担保力十分であるとして被控訴人に対し単に右金銭の貸借並に手形振出の事実を証する意味で該手形に署名を求めたので、被控訴人もこれを諒としその趣旨をもつて前記のような記載をなしたものであることを認めるに十分であつて、右認定に反する前顕証人吉田理平及び原審における控訴本人の各供述部分はいずれも措信し難く、他にこれを覆して控訴人の前記主張事実を肯認するに足る証拠は存しない。
然らば被控訴人の本件手形における前記記載は手形法にいわゆる手形保証をなしたものとは認めることができないので、被控訴人は本件手形金の支払義務はないものというべきであるから、その余の点についての判断を省略し、控訴人の本訴請求はこれを棄却すべきである。
よつて右と同趣旨に出でた原判決は相当であつて本件控訴は理由がないから、これを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 野田三夫 川井立夫 天野清治)